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“縛り”から創造された,そうだったかもしれない5つの時代。セガブースに出展された「STRANGER THAN HEAVEN」の見どころを,RGGスタジオのキーマンに聞いた[TGS2026]
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印刷2026/09/20 01:21

インタビュー

“縛り”から創造された,そうだったかもしれない5つの時代。セガブースに出展された「STRANGER THAN HEAVEN」の見どころを,RGGスタジオのキーマンに聞いた[TGS2026]

 2026年9月25日から開催中の「東京ゲームショウ2026」のセガブースでは,龍が如くスタジオ改め「RGGスタジオ」が贈る新作「STRANGER THAN HEAVEN」PC / PS5 / Xbox Series X|S。以下,STH)が出展されている。
 ブースでは本作のコンバット(戦闘)をいち早く試遊できるほか,さまざまなステージプログラム,作品世界を体験できるウォークスルーミュージアム,未発表曲を含む映像と楽曲を楽しめるシアターなど,盛りだくさんのコンテンツを展開中だ。

 ファンの熱気が渦巻くこの東京ゲームショウ会場で,「STH」のチーフプロデューサー阪本寛之氏,チーフディレクター堀井亮佑氏,ディレクター阿部幹信氏,アートディレクター加那屋大志氏らに話を聞けた。
 コンバットのバランスや手触り,時代物ならではの表現,そしてウォークスルーミュージアムに込められた“演出”に至るまで,本作に込められたさまざまな「こだわり」をお届けしよう。

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試遊版の手応え。バールは一番改良した武器だった


4Gamer:
 まずはファンの皆さんに向けて,阿部さんと加那屋さんの自己紹介をお願いします。

阿部幹信氏(以下,阿部氏):
 スタジオに新卒で配属されたのは,ちょうど「龍が如く7」の開発中でした。春日一番という新しい主人公を,RPGという新しいシステムでどう見せていくかという時期ですね。大学では映画を学んでいたこともあり,そこから演出面を中心に「7」や「8」に関わらせてもらっています。
 今回はゲームデザインの部分にも深く関わっており,最初のモック作成やコンセプトムービーなどは加那屋と綿密に相談して進めつつ,ゲームとしてどう成立させるかについては,堀井さんにもかなりサポートしていただきました。

阿部幹信氏
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阪本寛之氏(以下,阪本氏):
 THのトレイラーは,今までの映像とはかなり作り方が違うんです。あれは阿部の演出に寄せています。

阪本寛之氏
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堀井亮佑氏(以下,堀井氏):
 彼は作品全体を理解し,どう映像で切り取れば人をワクワクさせられるかを考えるのに,すごく長けた人間なんですよ。

堀井亮佑氏
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加那屋大志氏(以下,加那屋氏):
 私はもともとアーケードゲームの開発に携わっていたのですが,「龍が如くを作りたい」と希望を出して,12年ほど前にRGGスタジオへ参加しました。ちょうど「龍が如く0」の頃から関わり始め,キャラクターデザイナーとして「龍が如く6」などにも携わっています。
 アートディレクターを務めるようになったのは「7外伝」からで,三嶽(三嶽信明氏。「龍が如く」シリーズアートディレクター)をはじめ,諸先輩方のサポートを受けながら進めていきました。その次に関わったのが今回の「STH」になります。

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4Gamer:
 TGSのバージョンを遊んでみて,以前とはかなり感触が変わったように感じます。根本的な仕組みは変わっていないですが,製品版だと思える戦闘バランスに,より近くなったのではないか,と。

阪本氏:
 そうですね。今回はより製品版・本編に近いイメージに寄せたほうがいいだろうと,敵の体力は本編と同等のものにし,ボスはしっかり歯応えのある調整にしています。

4Gamer:
 新しく加わった日本刀は,一気に「あのジャンル」らしさが出て見栄えがしました。バールは以前もありましたが,今回のプレイで真価が見えた気がします。広範囲を薙ぎ払うことができ,当たっていない相手まで恐怖で腰砕けになり,そこにどんどんフィニッシャー(強力な追い打ち)を当てて倒せてしまう。画面がものすごい絵面になっていました。

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阪本氏:
 バールは,以前のバージョンから一番改良を重ねた武器なんですよ(笑)。これまでの体験イベントでのフィードバックを持ち帰ってチューニングした部分で,レスポンスを上げて当たりやすくしたいと考えていました。一方,重いものを振り回す感じも両立させたい意図があったので,モーションから変えています。

4Gamer:
 大東が初期に着ている半纏(はんてん)も「八島貿易会社」ですし,商売道具でもあるバールはぴったりだな,と。

ちなみに阪本氏が大東と同じ半纏を着ていた。社名の横に,電光石火,縦横無尽のキャッチコピーが躍る
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阪本氏:
 あとは,その当時存在しなかった道具は使わないようにしています。包丁なども,前の時代とあとの時代ではちゃんと変えるなど,その時代にあるもので戦うことは心がけています。

加那屋氏:
 コンセプトとして,日常にもある危険なものを駆使して戦う,というのを意識しているんです。

堀井氏:
 日本刀も,昔はけっこうご家庭にあったと思うんですよ。

4Gamer:
 ああ,床の間なんかに……飾ってあったんでしょうか(笑)。


誰も「本物」を知らない時代をどう作るか


4Gamer:
 街を彩る看板や,随所に散りばめられたポスターなどにもだわりが詰まっているように感じました。

阪本氏:
 こちらは史実どおりに作るというよりは,少し現代の感覚を混ぜたバランスにしようと考えています。

加那屋氏:
 背景デザイナーと一緒に取材に行って,現代の僕らの感覚で「面白い」と感じたものを取り入れるようにしました。ただ,リアルを目指しているわけではないので,文言はあえて少し変にしたりして,見つけた人がクスッと笑えるよう心がけています。そもそも昔の看板を調べてみると,達筆すぎて何のお店か読めないものも多いんです。

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阿部氏:
 またゲームとして「これは何のお店なのか」がちゃんと分かるように調整する必要もあり,テイストを残しつつ伝わる形にするのは悩みどころでした。

4Gamer:
 世界に生き生きした空気が漂っている気がしたのですが,今回は現代劇ではなく,普段と違うものを作ることで,ある意味で開放されたという感覚もあったのではないでしょうか。

阪本氏:
 いえ,むしろそこは大きな縛りでした。その時代にない表現はしない,という大前提がありましたから。ただ,その「大きな縛り」の範囲のなかではかなり自由で,それっぽい架空のものでもOKという基準で作っています。

4Gamer:
 実際,今回描く5つの時代を多くのプレイヤーは見たことがないですし。

阪本氏:
 写真や昔の映像からしか知ることができない時代なので,ある意味,全員が架空の世界を想像しているのに近いんです。
 開発している僕らすら,本当のところは分からない。そのなかで「それっぽく」感じさせるためには,とにかく緻密に作らなければいけませんでした。建物の構造から扉の形まで含めて,全部きっちり作り上げないと,どこかチグハグな印象になってしまうので。

加那屋氏:
 調べてみると,かつての日本はかなり整然とした街並みで,建物も道も想像以上に整備されているんです。ただ,それをそのまま描くとゲームとしてつまらないので,あえてごみごみした感じにするなど,ディレクションでかなり姿を変えています。

4Gamer:
 ゲームでは,戦前からありそうな商品のパロディを見つけたり,怪しげな看板やポスターなどを見たりしながら歩くのが楽しみです。

阿部氏:
 「気づく人は気づくかも」くらいの絶妙なラインで,クスッと笑えるパロディも仕込んでいます。おっしゃるようなネタは開発初期に考えていましたから。
 ちなみに本作の音楽に関しても,街並みと似た考え方で作っていて,まず電子楽器は絶対に使わないという強い縛りがあります。それでも,今の人の耳に刺さるメロディや音色をどう作るかの工夫については自由,という感じですね。


実はドラマの暗示にもなっていたウォークスルーミュージアム


4Gamer:
 ウォークスルーミュージアムの体験も,とても印象的でした。

阪本氏:
 本作はストーリーのスケールが大きく,ゲームシステムも新しいため,限られた試遊時間だけで魅力を伝えきるのが難しいんです。そこで「5つの時代を歩む壮大な物語」であることや,国際色豊かなキャスト陣の魅力を別の形でも感じてもらうために,ミュージアムやシアターといった形でブースを構成しました。

4Gamer:
 実際に歩いてみてとくにグッときたのが,熱海以降の展示です。光の加減で少し顔が見えにくくなっている真城らしき男と,その男を見つめる大東の立ち位置から見える関係性が味わい深いなと……。

加那屋氏:
 あの空間全体は,目線を誘導するように設計していて,大東の視線の先を進んでいくとそのまま順路になるようになっていたんです。ただ場面を見せるのではなく「体験として面白いものにしたい」という意図で,対照的なふたりの男の“縁”みたいなものを表現したインスタレーション(空間芸術)的な試みだったのですが,実際に気づいていただけて嬉しいです。

4Gamer:
 そこを抜けた先にある,1965年新宿の大東の姿も衝撃的でした。これまでは主に顔のアップが提示されていましたが,少し引いて見ると……これ以上はまだ言えない話のような気もしますが。

加那屋氏: 
 そうですね。ちなみに絵の構図については,最初に展示されていた大東の姿とリフレインになっているんです。

4Gamer:
 その間のドラマを想像してしまいますね。

阿部氏:
 今回のブースはトータルの体験として構成していまして,シアターでは音楽や映像の熱量を浴びてもらい,ミュージアムでは5つの時代における街の変遷や生活を切り取って見せる。試遊でのバトル体験と合わせることで,「STRANGER THAN HEAVEN」という作品の全体像が伝わるように設計しています。

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フィクションとしてのリアリティとゲーム作りの定石からの脱却


4Gamer:
 ところで今作は,阿部さんがディレクターとして中心的に関わられているとのことですが,堀井さん(チーフディレクター)との役割分担はどのようになっているのでしょうか。

堀井氏:
 プロジェクトの立ち上げから阿部を中心に進めています。ですが,最終的にゲームとしてまとめるタイミングで僕が入り,ゲームとしての着地を意識した,という形ですね。
 「龍が如く」シリーズはメインストーリー以外の要素も多く,全体のプレイ時間のなかでストーリーの比重は半分以下ということもありました。しかし「STH」は主人公の一生を描くということもあり,とにかくメインストーリーのボリュームが大きいんです。そこにゲームとしてどんな味付けが必要か,という部分を僕がフォローアップしていきました。

4Gamer:
 そもそもRGGスタジオ内でディレクターはどのように決まるのでしょうか。立候補制,とかではないですよね。

阿部氏:
 ではないですね(笑)。

阪本氏:
 この作品を作るにあたり,まず「どんな空気感や時代感を表現したいか」というコンセプトムービーを作ったのですが,そのディレクションを担当したのが阿部でした。それが素晴らしい出来で。
 「龍が如く」とはまったく違う方向性を決めるにあたり,最初にビジョンを作った人間にやってもらうのが一番いいだろうという判断があったんです。
 また,本作のシナリオは日本語と英語がハイブリッドで交わされる物語なので,阿部自身も英語が話せますから,そのあたりの感覚も含めて適任だったわけです。

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4Gamer:
 なるほど。作品の演出やゲームとしての部分だけでなく,あらゆるところに阿部さんのバックグラウンドが活きているんですね。作中で大東がものを食べたときに,ふと英語が出たりするのもそうなのでしょうか。

阿部氏:
 はい。若いころはバトル時に「Take this!(これでも喰らえ!)」なんて英語で叫びながら倒していたのが,物語が進むにつれて日本の極道の世界や環境に染まっていき,セリフや身体の動きまで変わる。
 自分自身も海外で育った人間なのですが,そういった「染まっていく部分」と「どうしても染まり切らない部分」の微妙な変化を,こだわって描きこんでいます。

4Gamer:
 最後に,読者の皆さんにメッセージをお願いします。

阪本氏:
 我々は,今も昔も「現実を再現する」ことを目的にゲームを作ったことはありません。1915年から始まる50年というこれまでにない時間軸を描いていますが,本質にあるのは「フィクションでありながらも,圧倒的なリアリティを感じられるドラマ体験」をお届けすることです。
 そのブレない軸と,新たな挑戦を楽しんでいただければと思います。

加那屋氏:
 開発として「何が面白くて何がいらないか」を徹底的に判断しつつ,我々なりの「あったかもしれない日本」を描き出しました。プレイヤーの皆さんには「こんなゲームやったことがない」「すごく挑戦しているな」という驚きや体験を味わっていただけたら嬉しいです。

阿部氏:
 自分自身,幼少期に海外で過ごして日本へ戻ってきた経験があり,大東や新庄の葛藤には個人的にも強い思い入れを持って描きました。
 ただ,こだわりを詰め込みすぎて重くなりすぎないよう,あくまで「エンターテインメントとして最高に面白いドラマ体験」になるよう削ぎ落とし,丁寧に磨き上げています。ぜひその物語に浸ってください。

堀井氏:
 僕たちが一番大事にしたのは,業界や自分たちのなかにある“お約束”にとらわれないことです。
 昨今のアクションゲームのトレンド(パリィなどのシステム)や,自分たちが培ってきた「龍が如く」の型に乗っかるのではなく,「この作品にとって何が一番面白い体験なのか」をゼロから愚直に悩み抜き,もがきながら形にしていきました。
 開発陣の熱量がギッシリ詰まった作品になっていますので,ぜひご期待ください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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