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ソウル・トリアージADV「UN:Me」インタビュー。花守ゆみりさんの演技がもたらしたモーションキャプチャ採用への決断。そして人の感情から導かれた作品のカタチとは[TGS2026]
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印刷2026/09/25 13:00

インタビュー

ソウル・トリアージADV「UN:Me」インタビュー。花守ゆみりさんの演技がもたらしたモーションキャプチャ採用への決断。そして人の感情から導かれた作品のカタチとは[TGS2026]

 「Caligula -カリギュラ-」シリーズの山中拓也氏を企画・シナリオに迎え,集英社ゲームズとヒストリアがタッグを組んで制作が進められているソウル・トリアージアドベンチャー「UN:Me」(PC / Switch2 / PS5)が2027年に発売予定だ。

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 2026年9月17日から9月21日(※9月21日は台風の影響によりオンライン開催)まで開催されていた東京ゲームショウ2026の集英社ゲームズブースでは異彩を放つ展示と試遊体験が待っていた。

集英社ゲームズブースの「UN:Me」エリア。エレベーターやウォークスルーで,本作の世界が表現されていた
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 ただ筆者には,今回の試遊版で体験できたものの延長線上に,本作の物語が綺麗にまとまっていくようには感じられなかった。まだまだこの作品は隠していることだらけ……そんな感触を受けたのである。
 そのあたりを探るべく,山中拓也氏,本作の総合プロデューサーの河合泰一氏(集英社ゲームズ),ディレクターの佐々木 瞬氏(ヒストリア),そして4つの魂を演じる声優の花守ゆみりさんの4名に話を聞いてきた。

左から佐々木 瞬氏,河合泰一氏,花守ゆみりさん,山中拓也氏
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 集英社ゲームズは本日から9月21日まで開催される東京ゲームショウ2026にブースを出展している。その開催に先立ち,新作アドベンチャー「UN:Me」のTGS試遊版をプレイする機会を得た。既存のホラーゲームや脱出ゲームの文脈とは異なる,その謎に満ちた内容をお伝えしよう。

[2026/09/17 10:00]


会場での「花人間」との遭遇で気づいたこと


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずはTGS 2026のブース展示と試遊の見せ方についてお聞かせください。

河合泰一氏(以下,河合氏):
 日本では初の試遊ということで,ヒストリアさんにもいろいろとご協力いただきつつ,かなり力を入れた展示となっています。
 ただ試遊するだけではなく「世界観の体験」という部分をすごく大事にしていまして。まずはブース内のエレベーターに乗って上階へ向かっていただくのですが,本作はエレベーターの中で起きることが非常に重要なんです。そこで気持ちを高めていただいた状態で試遊に入っていただく,そうした演出になっています。

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4Gamer:
 「UN:Me」世界の一部を体験できるウォークスルーも,なんとも言い難い雰囲気がありましたね。

河合氏:
 弊社にはイベントの空間作りを担当するメンバーがおり,彼らがかなりの熱量で作り込んでくれました。マルチプレイの体験に寄せた別の出展タイトルもありますが,こちらは世界設定や「その場で起きる体験」を追求しています。

佐々木 瞬氏(以下,佐々木氏):
 開発側も,ブース前面にある壁面のナースや「花人間」のビジュアルなどをどう見せるかをしっかり考え,ライティングの調整や明るさのレタッチなど,ブースの質を高めるための協力を行っています。

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4Gamer:
 ところで,TGS会場でトイレに行ったとき,中から「花人間」が出てきてギョッとしたんです。それ自体は別の作品にちなんだ扮装だったようですが,本作で描いている感覚はこれに近いのかなと,腑に落ちた瞬間でした。

佐々木氏:
 それはすごい偶然ですね(笑)。でも根源的なところで「人間はどう動いてしまうか」「日常の延長でどう感情が揺れるか」を計算して揺さぶるという意味では,あながち作品のコンセプトと遠くないかもしれません。

山中拓也氏(以下,山中氏):
 我々にとってはありがたい偶然です(笑)。

4Gamer:
 試遊版を遊んだ印象では,いわゆる市場のニーズではなく,クリエイターとしての衝動というか「作らざるを得なかった熱量」を強く感じました。

山中氏:
 おっしゃるとおりです。昨今のゲーム企画は「世の中のニーズ」を考えることから始まるのが一般的で,僕も佐々木さんもそうやってゲームを作ってきました。
 ただ今回は,売り方や市場分析などを一切書いていない企画書を集英社ゲームズさんに拾っていただき,スタートしています。「自分たちが作れたら面白いよね」という思いを形にさせていただけた感覚ですね。

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佐々木氏:
 以前,山中さんとご一緒したタイトルの打ち上げで「何かもう一作やりましょう」という話になり,山中さんと一緒にゼロから企画を作ってパブリッシャを探し始めたんです。当時はインディーゲームが注目され始めていた時期でもあり,密かな期待もあったのですが,持ち込んだなかで一番尖ったこの企画を選んでいただけるとは想像もしていませんでした。

山中氏:
 「本当にこれで出すの?」とお互い思いながら書いた企画書でしたからね。いい意味でパブリッシャを試すような尖り方だったのですが,河合さんが面白がって拾ってくださったことで一気に動き出しました。

河合氏:
 僕自身,さまざまなゲームに携わるなかで,どうしてもマーケティング主導の企画が中心で「企画書の段階で完成形が想像できてしまう作品」に触れることが多かったんです。ですが「UN:Me」の企画書は,まったく完成形が想像できなかった。「本当に完成するの?」とも思いました。

4Gamer:
 実際,リリースが2027年に延期になってしまいましたね。

河合氏:
 はい(笑)。でも完成形が見えないからこそ,自分にとってもこれまでと違うアプローチができる点に強く惹かれ「これをやりたい」と佐々木さんにお伝えしました。

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 集英社ゲームズは本日(2026年9月17日),ソウル・トリアージ アドベンチャー「UN:Me」の発売時期を2027年に延期すると発表した。あわせて,主人公役を花守ゆみりさんが担当することを発表し,少女に宿る4つの魂のうち,魂IIと魂IVの詳細を公開した。

[2026/09/17 14:03]

佐々木氏:
 3人とも特定のゲームジャンルで長く作ってきて,良くも悪くも自分の腕に自信がついたタイミングだったんだと思います。3人のなかにあった「新しい挑戦がしたい」という機運が合致した結果ですね。
 でも,単に「見たことないもの」を作りたいわけではありません。私はVRやアーケードゲームの開発経験も多く,数分間で強烈な体験を与えるために「人間はどんな刺激を受けると,どう感じるか」ということを追求してきました。そのアプローチをコンシューマゲームに持ち込んで,「人の感情を動かす本質」からモノづくりをしたかったんです。

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花守さんの演技がモーションキャプチャ導入のきっかけに


4Gamer:
 本作は4つの魂と対話を重ねていく構成ですが,対話相手である「プレイヤーの身の置き所」にも大きな謎が隠されているように感じます。

山中氏:
 鋭い質問ですね。いわゆる無色透明なプレイヤーにしてはしゃべる内容に個性がありますし,受け答えの反応からも何かを掴んでいそうに見える。「そもそもこのプレイヤー自身は何者なんだろう?」という疑問を頭の片隅に置きながらプレイすると,より深く楽しんでいただけると思います。

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4Gamer:
 花守さんは役作りや収録に際して,かなり早い段階から全体の物語を把握されていたのでしょうか。

花守ゆみりさん(以下,花守さん):
 はい,初期段階ですべてのストーリーや背景をうかがっていました。対話を重ねるなかで相手の輪郭だけでなく,自分自身の存在も知っていく構造なので,すごくいろいろなことを考えてしまうシナリオでしたね。

佐々木氏:
 そして花守さんのボイスを先行して収録させていただいた段階で,開発現場に大きな衝撃が走りました。「これはすごい体験になる」と確信したと同時に,自分たちが作っていた既存のモーションでは,花守さんのお芝居の熱量や微細なニュアンスにまったく追いついていないぞと感じたんです。

花守さん:
 収録の終盤で,「モーションキャプチャを入れることになりました」とお聞きしたときは本当に驚きました! 私たちのお仕事は映像に合わせて声をあてるアフレコが主流ですし。

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4Gamer:
 ゲームでもセリフの収録後に動きをつけるケースはありますが,本来の意味でのプレスコ(先にセリフを録音し,その声や演技のテンポに合わせて映像を作る手法)になったわけですね。

花守さん:
 あの……私,ご迷惑をかけてないでしょうか?(笑)

佐々木氏:
 いえいえ(笑)。むしろ,正解のない手探りの開発だったからこそ,花守さんのお芝居がプロジェクトの大きな柱になってくれたんです。「この演技に追いついていない映像のまま出したら絶対に後悔する」と現場も盛り上がったので,スケジュールを気にしつつも,モーションキャプチャの採用へと踏み切りました。

山中氏:
 今回は「お芝居」が主導権を握る作りとなり,話を書く側としても,とても贅沢で刺激的な経験になりました。


声色を変えるのではなく,肉付けによって演じ分けた


4Gamer:
 本作では4つの魂と対話していくことになりますが,この「4つ」という数にも何か意味があるのでしょうか。

佐々木氏:
 どちらかというとゲームシステム上の理由です。企画書段階からやりたかったのは「アンコントローラブルな体験」であり,勝手に表の魂が切り替わってしまうこと,そして対話を通じて1つずつ魂を消していく(選択していく)ことでした。
 ただ,今回は記号的なキャラ付けをしていないので,魂が切り替わったことをプレイヤーに理解してもらうのはなかなか大変だったんです。しかも最初の企画段階では魂は7つあったんです。

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4Gamer:
 7つもですか!

佐々木氏:
 その状態でテストしてみたら「今は3番目だっけ,5番目って誰だっけ?」とプレイヤーが覚えきれなくて(笑)。ただ,3つにしてしまうと,今度は魂を削ぎ落とす機会が2回しかなくなり,それもゲーム体験として成立しにくくなってしまいます。それでたどり着いたのが4つでした。

山中氏:
 その結果,シナリオは全部書き直すことになりました(笑)。でも4つになったことで「明」「暗」というような安易な属性分け(記号化)に頼らず,人間の繊細なグラデーションを描き切るベストな形に着地できたんじゃないかと思います。

4Gamer:
 確かに試遊の範囲でも,言葉選びや間の取り方から「本当にこういう子がいそうだな」と思わせる生々しさがありました。

山中氏:
 そこは台本のセリフをそのまま読んでもらうのではなく,花守さんのやりやすい口語や息づかいになじませてもらった部分も大きいですね。

4Gamer:
 声色の変化というより,“気持ちの乗せ方”の違いで魂を演じ分けられている?

山中氏:
 声優さんの技術であれば,声色だけで簡単に演じ分けられてしまうのですが,そうではなく「同じ肉体から出ている声である」という前提を大切にしたかったんですね。

花守さん:
 お話をいただいたときも「1人で4つの魂を演じます」「収録はかなり大変だと思います」と最初に提示されて,ボイステストを経てお引き受けしました。
 役作りとしては「分ける」というより,それぞれの魂の設定に対して「1つずつ肉付けをしていく」感覚でした。肉体は1つだからこそ,「この魂だからこういう話し方をするんだな」と向き合っていくと,自然と差が生まれていったんです。

山中氏:
 今回は僕が音響監督(収録のディレクション)も兼任させていただいたので,花守さんから「この場面でこの子はこう言いたくないはず」という指摘があれば,その場でセリフを微調整できました。キャストのリアルな感情を反映できて,双方で作品の質を高め合えたいい現場だったと思います。

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過剰な共感性がキャラクターに生々しさを与える


4Gamer:
 山中さんは過去にカウンセラーを目指していた時期があるそうですが,今回の作品にも関係しているのでしょうか。

山中氏:
 実のところ僕は共感性が高すぎて,相手の感情を自分のなかに引き込みすぎてしまうところがあるんです。恩師からは「メンタルが持たないからやめたほうがいい」と言われて,それでカウンセラーの道を断念した経緯があるんです。ただ,人間を描写することへの執着は,そのころから変わっていないと思います。

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4Gamer:
 それがキャラクターを描くうえでは「祝福」になっているわけですね。ところで,本作の魂たちはあまり本当のことを話していない印象も受けましたが。

山中氏:
 ……そうですね。僕自身,1人のプレイヤーとしてゲームを遊ぶとき,キャラクターがわざわざプレイヤーの行く道を誘導するようにしゃべってくるような「ゲームの都合」が見えた瞬間に没入感が削がれてしまうタチなんです。だからこそ徹底して,魂たちの思惑のままにしゃべらせることを意識しています。

佐々木氏:
 開発初期には「嘘をついているときに視線の揺れを指摘する」といったゲームシステム的な仕掛けも考えてはいたのですが,すっぱりとやめました。魂の内面やシナリオに没入してもらうため,システム側も慎重に削ぎ落としています。

4Gamer:
 そうして描かれるキャラクターの生々しさにも注目ですね。最後に,本作の注目ポイントや読者へのメッセージをお願いできますか。

山中氏:
 僕は主人公の女の子のビジュアルがすごく好きで。いわゆる「CGモデルの最適解的な美人」ではなく,「クラスや電車に絶対に1人はいるよね」というリアルな可愛さなんですよ。腰に巻いたジャージやペンの挿し方まで,等身大の女子高生の手触りを追求させてもらいました。

画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / ソウル・トリアージADV「UN:Me」インタビュー。花守ゆみりさんの演技がもたらしたモーションキャプチャ採用への決断。そして人の感情から導かれた作品のカタチとは[TGS2026]

佐々木氏:
 主人公の魅力を引き出すために,そこに特に注力して作り込みました。だからこそ,試行錯誤の連続だったこのプロジェクトが,ここまで走ってこられたと思っています。

河合氏:
 発売は2027年へと延期させていただくことになりましたが,花守さんの素晴らしい演技が入り「絶対にいいものになる」という強い確信を持っています。関わっている全員がこだわり抜いた100%の完成形をお届けしますので,楽しみにお待ちください。

佐々木氏:
 数々の試行錯誤を経て花守さんのボイスが入ったことで,本作が目指すべき「人間の内面を描く体験」の答えに行き着くことができました。ぜひその到達点を見届けていただければと思います。

山中氏:
 スクラップ&ビルドを繰り返した結果,今のチームは「間違いなく面白いものができている」という自信に満ち溢れています。「ちょっと変わったゲーム体験」を求めている方に,ぜひ遊んでいただきたいです。

花守さん:
 今回私が演じた魂たちには,人間としての綺麗な面だけじゃなくて,生々しいエゴやドロドロした部分もあるんですよね。そんな彼女たちと深く対話していった末に,プレイヤーの皆さんの胸に何が残るのか。一筋縄ではいかない感情の揺れを,ぜひそのまま味わっていただけたらと思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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