そのなかで,日本から8作品をまとめて出展していたのが,一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の若手ゲームクリエイター育成プログラム「Top Game Creators Academy」(TGCA)だ。
![]() |
TGCAは,CESAが文化庁,独立行政法人日本芸術文化振興会と連携して実施している人材育成プログラム。第I期では個人・チーム合わせて10組のクリエイターを採択。2025年4月から2年間にわたり支援を行っている。
今回gamescom 2026には,そのうち8組が作品を出展。いずれも開発者自身が現地を訪れ,来場者にゲームを紹介していた。
![]() |
gamescom 2026に出展していた8タイトル
■「Near The Sun」 / Nonlinear Project
ロボットに支配された終末後の地下世界を舞台にした,2Dステルスアクション・メトロイドヴァニア。
![]() |
■「Out of Skull」 / Inonaka Games
自分の頭蓋骨を投げ,ほかの身体へ乗り移りながら謎を解いていくパズルアクション。
![]() |
■「Cyber Janitor」 / TAKKAN Digital Lab
数学関数を武器に,デジタル世界の病原体と戦うシミュレーションゲーム。
![]() |
■「NyctoType」 / BogosorGames
タイピングの速さと,ボードゲームのような戦術性を組み合わせた対戦型タイピングストラテジー。
![]() |
■「Ghost in the brain」 / simizu
異形の怪物から逃れながら,失われた記憶を取り戻していくホラーアドベンチャー。
![]() |
■「Weatherium」 / Pokeso
天候をコントロールしながら,人が暮らせる世界を作り上げていくシミュレーションゲーム。
![]() |
■「Recover from Ruin」 / NAKAYA Chihiro
ロボットを操作し,汚染された惑星を浄化していくアクションアドベンチャー。
![]() |
■「Sketch Switch」 / Enén Soén
描いたものをAIの力で動く仕掛けへと変え,協力して遊びを作り上げるクリエイションゲーム。
![]() |
海外出展で“持っていくもの”はゲームだけではない
同プログラムについて,TGCAの運営を担当するCESAの原田俊作氏と,参加する育成クリエイターに話を聞いた。
支援の大きな柱となっているのが,現役のゲームクリエイターらによる伴走支援だ。
育成クリエイター2〜3組に対し,複数人の専任メンターがつき,月に1回ほどオンラインでミーティングを行う。もう一つが国内外のイベントへの出展で,来場者からその場でフィードバックを受けたり,ゲーム業界の関係者とつながったりする機会を作る。
2025年の東京ゲームショウに始まり,2026年1月には台北ゲームショウ,そして今回のgamescomへ。9月には再び東京ゲームショウへの出展を予定しており,プログラム自体は2027年3月まで続く。
![]() |
そして今回がTGCAとして初めてのgamescom出展となる。
こちらの記事でも伝えた通り,今年のgamescomでは日本から参加するゲームや開発者,支援団体の姿も多く見かけた。
その1つであるCESAのブースでは,作品を遊んでもらうだけでなく,普段とは異なる層のプレイヤーから反応を受け取り,海外のゲーム関係者と接点を作る機会が生まれていた。
[インタビュー]日本からの出展社は25%増。出展エリアが初めて完全に埋まったgamescom 2026の狙い[gamescom]
2026年8月26日から30日まで,ドイツ・ケルンでgamescom 2026が開催されている。出展エリアが完全に予約で埋まったのは今年が初めてで,出展社登録は3年連続で記録を更新した。gamescomディレクターのティム・エンドレス氏と,ドイツゲーム産業連盟の代表理事フェリックス・ファルク氏に,会期に先立って質問を送った。
海外イベントへの出展というと,ゲームを海外のプレイヤーやパブリッシャーに知ってもらうことがまず思い浮かぶ。ただ,原田氏の話を聞いていると,作品を知ってもらうことより前段階にある,作っているクリエイター自身が海外の現場に立つことも大きな目的の一つであることが分かる。
作品だけを海外へ持っていくのではなく,作り手自身が現場に立ち,プレイヤーの反応を見て,人と話し,何かを持ち帰る。それもイベント出展を支援する意味の一つなのだろう。言語の問題はもちろんのこと,なにより一人もしくは少数でgamescomへの出展を進めることは相当な高難度だ。
![]() |
決めるのは,あくまでクリエイター自身
では,TGCAが掲げる「伴走支援」とは,実際には何をするものなのか。もう少し詳しく聞いてみた。
原田氏の話で印象に残ったのが,最終的に何をするかを決めるのは,あくまでクリエイター本人という考え方だった。
メンターは助言をするが,代わりに答えを決めるわけではない。クリエイターが何をやりたいのかを引き出しながら,「こういう方法もあるのではないか」と別の選択肢を示していく。メンターにも,その点は意識して参加してもらっているという。
原田氏は,CEDEC 2026で行われたTGCAのセッションで,専任メンターから語られた「待つこと」という言葉も紹介してくれた。
すぐに答えを渡すのではなく,クリエイター自身が自分の軸を持ち,そこから答えを導き出せるようになるのを待つ。それもメンターにできることの一つではないか,という話だったそうだ。
![]() |
言葉だけを聞けばシンプルだが,実際にはかなり難しい。
アドバイスをどこまで伝えるのか。どこから本人に任せるのか。運営側が「この機会をこう使ってもらえれば」と考えていても,必ずしも本人にとってそれが一番いい使い方とは限らない。
原田氏によれば,今回のgamescomでも“イベントの使い方”はクリエイターによってかなり違っていたという。
企業へ積極的に作品を紹介し,ビジネス上のつながりを作ろうとする人もいる。一方で,来場者から反応を受け取ると,すぐ開発に戻って手を入れたくなる人もいる。
発売が近い作品であれば,細かな改善点を集めるよりも,まず多くの人に作品を知ってもらい,Steamのウィッシュリストにつなげることを優先する場合もある。同じ場所を用意しても,その活用方法は人によって違う。
原田氏自身も,TGCAについて単純に「うまくいっているプログラムです」と語るのではなく,運営側もさまざまな課題を抱えながら取り組んでいると率直に話していた。
クリエイターとメンターがうまくかみ合ったときには,大きな変化が生まれる。その一方で,「どこまで口を出すのか」は今この瞬間にも悩むことがあるという。
![]() |
そうした支援の難しさは,TGCAが設定するゴールにも関係している。
TGCAは人材育成を目的としたプログラムであり,「2年間でゲームを完成させる」といった一律のゴールを参加者に設けてはいない。
期間中にゲームが完成しなくても構わない。制作を通じて技術やアイデア,経験を身につけ,その後につなげていくことを重視しているという。
これが自由である一方,難しい部分でもあったようだ。
完成や発売といった分かりやすい到達点を置かないことで,「どのくらいまで進めればいいのか」「何を成果と考えればいいのか」を,参加者やメンターが迷うこともあったという。
それでも,その過程で変化していくクリエイターはいる。
今回話を聞いた育成クリエイターも,TGCAに応募した当初は,まず作品のクオリティをもう一段上げたいという思いが大きかったそうだ。
第I期ということもあり,参加前には「どこまで自分たちの役に立つのだろう」と感じていた部分もあったという。しかし,実際に約1年半にわたってメンターから助言を受けてきたことで,作品は参加前とは比較にならないほど変わったと話す。
![]() |
そして,作品そのもの以上に影響を受けたのが,ゲームを作るときの考え方だった。
技術やイラストについて具体的な方法を教わるというより,「ゲームをどう作るのか」「商品として見たときにどうなのか」「人へ届けるには何が必要なのか」といった,自分たちだけではなかなか身につけにくい視点を得られたことが大きかったという。
もともとは,大学のサークルを中心に「自分たちの好きなものを作って,人に遊んでもらえればうれしい」というところから始まったチームだった。当初から「これで食べていく」「絶対に売る」といった意識が強かったわけではない。
それがTGCAへ参加し,メンターやほかのクリエイターと接するなかで,せっかく作ったものならば,きちんと人に届けたいという思いが強くなっていった。
たとえばチュートリアルも,操作法など形だけを伝えるのではなく,初めて遊ぶ人にもきちんと伝わり,楽しんでもらえるものにする。それはゲームを「売る」ことにもつながる。作ったものを誰かに届けるために必要なことを考えるようになった,という話だった。
![]() |
作品も人も違う。だから支援する側も悩む
ここ数年,インディーゲームを対象にした支援プログラムは増えている。
企業によるものもあれば,行政や業界団体が関わるものもある。資金を提供するもの,開発面でアドバイスを行うもの,イベントへの出展機会を設けるものなど,内容もさまざまだ。
今回,原田氏や育成クリエイターに話を聞いていて印象に残ったのは,TGCAが何か一つの「正解」を参加者に示そうとしているわけではないことだった。
インディーゲームとひと口にいっても,その作り手はそれぞれ違う。学生や個人制作から始めた人もいれば,ゲーム会社での開発経験を経て独立した人もいる。最初から海外展開やパブリッシャーとの契約を見据えている人もいれば,まずは自分が作りたいものを形にするところから始める人もいる。
そうであれば,必要なサポートも一様ではない。一人ひとりに合わせようとすれば,そのぶん支援する側にも手間がかかる。どこまで踏み込むのか,いつ助言するのか,いつ待つのか。その判断も,作品や人によって変わってくる。
![]() |
原田氏が,そうした難しさを隠さず話してくれたことも今回の取材では興味深かった。
もちろん,TGCAのやり方がすべてのクリエイターに合うわけではないだろうし,プログラム自体もまだ第I期の途中だ。
だからこそ,開発者側が支援プログラムを見るときには,受けられる資金や出展できるイベントといった条件だけでなく,どんな考えでクリエイターと向き合っているのかも知ることができれば,自分に合うものを探すための材料になるのではないかと思う。そして,それを届けることもゲームメディアの役割の一つであることも。
支援する側と受ける側が,実際に何を考え,どんなところで悩んでいるのか。そうした声が広く伝わることで,開発者が自分に合った支援と出会うきっかけも少しずつ増えていくのかもしれない。
![]() |



















![画像ギャラリー No.016のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/016.jpg)
![画像ギャラリー No.019のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/019.jpg)
![画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/001.jpg)
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/003.jpg)
![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/004.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/006.png)
![画像ギャラリー No.015のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/015.jpg)
![画像ギャラリー No.013のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/013.jpg)
![画像ギャラリー No.022のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/022.jpg)

![画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/011.jpg)
![画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/009.jpg)
![画像ギャラリー No.014のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/014.jpg)
![画像ギャラリー No.020のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/020.jpg)
![画像ギャラリー No.021のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/021.jpg)
![画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/008.jpg)
![画像ギャラリー No.023のサムネイル画像 / 答えを教えるのではなく,ときには「待つ」。CESA「TGCA」のgamescom出展で聞いた,インディー支援の距離感[gamescom]](/games/991/G999110/20260905003/TN/023.jpg)