そのなかでいちばん奇妙だったのは,畑が一区画まるごと,地下へ沈んでいく場面だった。
正確にはエレベーターだ。四角い昇降台の上に土を敷き,作物を植え,収穫用のサイロを置き,ベルトコンベアでつなぐ。そこまで作り込んだ設備を,工場ごと下の階層へ降ろす。着いた先では作物の生育が上がり,収穫量が増えた。
引っ越しではない。畑をわざわざ動かす理由は,下の階層に満ちている毒が,この作物の生育によく効くからだった。
![]() |
Dubious Designの設立は2024年2月で,チームは6人。デモを担当してくれたのは,共同創業者でCEOのMichael Donoghue氏と,同じく共同創業者でCTOのStuart Taylor氏である。残りはアートディレクターのJamie Martin氏,アーティストが2人,ソフトウェアエンジニアのJan氏という編成だ。この日はDonoghue氏が横で解説し,Taylor氏がひたすらゲームを操作していた。
チームの原点になっているのは,「Factorio」向けのMOD「Ultracube」だ。2023年に公開されて評判を得たMODで,とくにTaylor氏の開発経験が本作の設計思想と各システムに引き継がれている,とDonoghue氏は説明した。パブリッシングはHooded Horseが担当する。
発表は2025年12月4日,「PC Gaming Show: Most Wanted」でのことだった。それ以降ウィッシュリストを受け付けており,直近の数週間で10万件を超えたという。マーケティングらしいマーケティングはこの発表1回だけで,gamescom 2026の週が,スタジオとして初めて能動的にプレスへ見せに来た機会にあたる。ゲームはスクラッチから組んだ独自エンジンで動く。
まずは,物語の枠組みから説明しよう。
正体不明の天体が現れた。それは恒星を持たないはぐれ惑星で,しかも太陽系との衝突コースにある。脅威なのか,それとも利用できるものなのかを見極めるため,プレイヤーは急ごしらえの調査隊として送り出される。ところが道中で物資が損傷し,満足な装備を持たないまま地表に降り立つ羽目になった。
降りた先は,意外なほど明るい。緑が生い茂り,色とりどりの花が咲き,見るからに居心地がよさそうな地表だ。これはサバイバルゲームがバイオームで進行度を表現するやり方を参考にしたもので,最初の拠点は安全で気持ちのいい場所にしておき,進むほど奇妙で不気味になっていく。つまりこの明るさは,地下へ降りるための対比として置かれているわけだ。
![]() |
最初に目に入る資源は,チタン鉱石とシリケート鉱石,そしてムーンクリスタルの3つだ。手で掘って拾える。ただしムーンクリスタルは夜しか採掘できず,昼は手が出せない。ゲームを始めて数分でこの制約にぶつかるのが,開発側の狙いなのだそうだ。
もちろん手掘りは本筋ではない。採掘機を置けば自動で掘ってくれるが,今度は電力がいる。太陽光パネルを置くか,燃焼式の発電機に何かをくべるか。しかも手に入るものは基本的にすべて自分で作らなければならない。
ここから本作らしくなってきた。地表には「ホロウステム」という作物が生えていて,収穫すると茎と種が手に入る。茎は燃料になる。つまり燃焼式発電機の燃料は,畑から採れるのだ。種は当然もう一度植えられる。シリケート岩を加工すれば畑の区画を作れるので,鉱石を掘る手で農場まで作れてしまう。
![]() |
農業を自動化するのが「ファームサイロ」だ。効果範囲を持ち,範囲内の畑にドローンが種を植え,実ったら収穫して出力へ運んでくれる。プレイヤーがやるのは,種を入れ,作物を取り出すための配線である。
これが思ったより厄介で,開発チームによれば,テストで最も好評だったのがまさにこの部分だ。
限られた面積のなかに,種を入れる経路,作物を出す経路,出した作物を種に戻して入れ直す経路を,すべて通さなければならない。しかも作物は燃料や中間素材にも回すので,全量を種に戻すわけにもいかない。正解はない,とDonoghue氏はいう。幾何学とロジスティクスのパズルとして,プレイヤーが解いて楽しむ要素だ。
種に戻す工程には,最近追加したばかりだという新機能が使われていた。「ベルトコンバータ」と呼ばれるもので,第1弾が種を取り出す装置になる。入力スロットと出力スロットを持つ通常の機械とは違い,ベルトの上を流れていくアイテムをその場で変換する。茎がベルトを流れて装置の脇を通過すると,種になって出てくるのだ。プレイヤーが手を加える必要はない。
![]() |
余った茎はゴムになり,ゴムはベルトやモーターユニットの材料になる。このように,同じ素材が複数の用途に化ける構造は,レシピの側にも仕込まれている。本作のレシピは入力を1つに固定しておらず,同じ物を別の材料からでも作れるようになっているのだ。
たとえば,建物の土台になる基本建材のシャープストーンブロック。これはシリケート岩から作れるのだが,レシピ画面にはもうひとつ,「ボーンシャード」という見たことのない材料が並んでいた。骨の破片,という意味の名前である。この時点では現物を持っていないし,どこで採れるのかも分からない。「これは何なんだろうね,いつ分かるんだろうね」と,Donoghue氏とTaylor氏は白々しく言い合っていた。序盤のうちから,まだ見ぬ地下を意識させるための小さな仕掛けだ。
![]() |
テックツリーを進めると,掘削機が作れるようになる。モーターユニットとチタン板を投入して組み上げるもので,これが地下へ降りるための唯一の手段になる。設置時にサイズを変えられるのが特徴で,開発が進むほど大きなプラットフォームを作れるようになるという。ただし掘削中は副産物が出続けるので,運び出す経路を作っておかないと詰まって止まる。
掘り終わると,穴はリフトプラットフォームになる。乗って降りると,そこは真っ暗だった。
なので降りる前にやることがある。バイオ炉でシリケートからガラスを作り,ランプを用意しておくのだ。大型ランプ,投光器,小型ランプと数種類あり,配置して明かりを確保してから初めて,地下が見える。
![]() |
最初の地下層は「湿潤層」と呼ばれていた。紫のキノコが群生し,紫がかった木が生え,地面がぼんやりと青緑に光っている。ここには「グロウキャップ」という新しい作物があり,地表と同じように畑とサイロで量産できる。暗くて不気味で,何かがいる気配がある,というのがDonoghue氏の説明だった。
その気配のひとつを,この日は,まだ未公開の要素として見せてもらった。古代の機構らしきもので,惑星の来歴と,かつてここにいた誰かを示唆する仕掛けになるという。何をするものかは教えてもらえなかった。ちなみに本作は2Dゲームで,画面に映っているものはすべて2DのPNGだ。ただし深度情報とノーマルマップにはかなりの手数をかけているそうで,そのおかげで空間に厚みが出て見えた。
リフトプラットフォームには,ロジック条件を設定できる。チタン鉱石が4000を超えたら上昇し,減ってきたら下降する。そうした条件を並べておけば,あとは勝手に往復してくれるわけだ。ベルトは昇降台の縁で自動的につながるので,プレイヤーはプラットフォームの上に何を建てるかだけ考えればいい。当面は物流と輸送が主用途になるが,のちのち生産設備そのものを載せる理由が出てくる,とDonoghue氏は含みを持たせた。
![]() |
地下には太陽が届かない。太陽光パネルが使えないので,電力を地表から運ぶ必要が出てくる。ここで登場するのが「パワーセル」だ。チタン板とグリッドワイヤーから作る上位の電力システムだが,制約が2つある。生産できる場所が限られていることと,5分で期限が切れることだ。
その場所というのが,間欠泉である。地下の間欠泉の上にしか「ベントチャージャー」を設置できず,パワーセルはそこでしか生産できない。生産すると5分の砂時計が回り始める。使いたい場所へ届く前に切れれば,作った電力はそのまま無駄だ。届いたパワーセルは放電式の発電機に入り,これまでの発電設備よりずっと広い範囲へ電力を供給する。
期限つきの資源はもうひとつあった。夜にしか採れないムーンクリスタルから作る「ムーンワイヤー」で,これも放っておくと消える。材料の採掘は夜間限定で,作ったあとも消えるのが早い。
冒頭の話に戻る。畑を地下へ降ろしていたのは,各階層に「触媒効果」と呼ばれる環境の修正値があるからだ。
湿潤層には湿度の触媒があり,その下の層には毒性の触媒がある。そしてグロウキャップのレシピは,この2つから恩恵を受ける。ならばと,プレイヤーはプラットフォームの上に畑とサイロを丸ごと建て,生産の途中でひとつ下の階層まで降ろす。毒を浴びた畑は触媒を2つ抱えた状態になり,収穫量が上がる。Donoghue氏によれば,この仕組みを考えたのは自身だという。
なお,この毒の層は3番目の階層にあたり,まだ公開されていない開発中の領域である。この日は色調と雰囲気だけ見せてもらった。
同じ発想は,もっと日常的な形でも出てくる。シリコンウェハーは湿潤層で作るのが最も効率がいい。ところが材料のガラスは,地表のシリケートからしか作れない。そこでプレイヤーは,地表でガラスを積み,プラットフォームを降ろしてウェハーを作り,また上がってガラスを積む,という往復を組む。この往復もロジック条件で自動化できる。
デモの終盤には,4つのプラットフォームがそれぞれ別の仕事をしながら動いていた。地下から掘ったチタンを上げるもの,地表から電力を下ろすもの,畑を触媒の層へ運ぶもの,ウェハーの材料を往復させるもの。理屈のうえでは全部を1つのプラットフォームでやってもいいし,もっと大きいものを作って一括でやってもいい。要は選択肢を渡しているだけなのだ,というのがDonoghue氏の説明だった。
![]() |
![]() |
工場が大きくなってくると,同じ構成を何度も置き直すことになる。そのため,ブループリント機能が実装されている。工場の一区画をコピーしておき,まとめて配置できる。実際に建設するのは「コンストラクションアーム」で,プレイヤーのインベントリから資材を取り出しながら,設定どおりに建てていく。完全な自動化に至るまでの中間段階として用意した便利機能だ,とDonoghue氏は位置づけていた。自動化ゲームなのだから,手作業は減らすに越したことはない。
![]() |
地下を別の方向へ進むと,見慣れない資源地帯があった。かつてこの惑星にいた巨大な生き物の死骸である。ここから採れるのは「エンシェントマロウ」,つまり骨髄と,先ほど名前だけ出てきたボーンシャードだ。しかも1つの採掘地点から,2種類が60対40の比率で同時に出てくる。
厄介なのは,2種類が混ざったままベルトに乗ってくることだ。この状態をDonoghue氏は回転寿司に例え,プレイヤーにとってのフラストレーションになるとも言い添えた。ボーンシャードはくだんのシャープストーンブロックへ回り,骨髄はバイオタールという燃料になる。そして両方を合わせたものが,セラミック板だ。
このセラミック板が,3番目の階層へ掘り進むために必要になる。深く潜るほど,掘削は出てきたものをさばくだけの作業ではなくなり,昇降路を補強するために材料を供給し続ける作業へ変わっていく。
![]() |
デモの最後に,マルチプレイの実演があった。本作は協力プレイに対応しており,イギリスに残っているチームのメンバーが,まさにその時間ゲームを遊んでいるという。ホテルのWi-Fiで問題が起きたら許してほしい,と前置きしてからTaylor氏が参加すると,接続はあっさり通った。画面の中には巨大に育った工場が広がり,同僚たちが農作業をしていた。
同時接続人数を聞いてみたところ,正直なところ分からないという答えが返ってきた。大規模な検証はまだやっていない。12人程度なら問題ないはずだが,数十人規模については何ともいえない。想定しているのは2〜4人の小さなパーティでのプレイだという。誰かが必ず限界まで人を詰め込もうとするので,いずれルールを決める必要はある,とも話していた。
日本語対応についても聞いた。ローカライズの優先度は間違いなく高い,という即答である。ただし翻訳担当には面白い課題が待っているらしい。本作はアイテムの名前に開発チームなりの冗談を仕込んでいるので,そのネタをどう届けるかが問題になるのだそうだ。ホロウステムやグロウキャップはまだ素直なほうで,こうした名前はこれから増えていくのだろう。
![]() |
発売時期については,今の時点では「Coming Soon」としか言えない,というのがDonoghue氏の答えだった。PC(Steam)でアーリーアクセスとしてリリース予定だ。



















![画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/001.jpg)
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/003.jpg)
![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/004.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/006.jpg)
![画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/007.jpg)
![画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/008.jpg)
![画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/009.jpg)
![画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/010.jpg)
![画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/011.jpg)
![画像ギャラリー No.012のサムネイル画像 / 「Factorio」の人気MOD「Ultracube」の作者が手がける自動化ゲーム「Substructure」。はぐれ惑星の地下を掘り進んでいく[gamescom]](/games/966/G096635/20260829028/TN/012.jpg)